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男性である漫画家・森もり子が、なぜ女性読者を共感させられるのか
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男性である漫画家・森もり子が、なぜ女性読者を共感させられるのか

LINEスタンプから飛び出した漫画家・森もり子さん。アリシー読者の心を掴んで話さない人気連載『大人のズル休み』は、どのような着想の元に生まれたのか? 前回に引き続き副編集長の藤田佳奈美がお聞きしました。

■描きたかったのは、アラサー女性のモラトリアム

藤田:現在、アリシーで大人気を博している『大人のズル休み』ですが、この作品はもともとどのようなコンセプトからスタートした物語なのでしょうか。

森:最初にあったテーマは、「大人になりきれない大人」を描こうということでした。自分としては、これは恋愛漫画ではなく、アラサーである僕自身や、周囲の友人たちがそこはかとなく感じているモラトリアムなムードを描ければと考えて始めたものなんです。

藤田:アリシーのペルソナである、「30歳を目前に漠然と将来に対して不安を抱きつつも、次の一歩をなかなか踏み出せない“いもむし女子”」というイメージにぴったりなテーマですよね(笑)。もちろん私を含め、いもむし女子たちには、自分らしい蝶になって羽ばたいてもらいたいんですがね……なかなか変わることができない。変わることってパワーがいるし、めんどくさいですからね。

森:そこはたまたま一致しましたね。連載開始前によく考えていたのは、日曜の晩に読んだ時、「よし、明日は会社休もう」と思えるような作品にしたいということでした。

藤田:それは逆に斬新ですね。「明日から頑張ろう」と思わせるような作品はたくさんありますが……。

森:そうなんです。だから、そういうタイプの作品はもう、皆さんお腹いっぱいなのではないかと。それよりも、読んで気持ちが楽になるものにしたかったんです。会社をズル休みするというよりも、大人の責任をズル休みするようなものを描きたくて。

藤田:実際、物語の中で、主人公の滝口さんにインスパイアされた倉田くんが、会社を休んでみたものの自己嫌悪に陥るシーンがありましたね。単にズル休みを提唱しているわけではない点も、この作品のリアリティだと感じました。誰もがズル休みをすることに賛同しているわけではないあたりに。

森:人には誰しもダメな部分があって、そこを肯定してあげたい漫画ではあるんです。そうしたダメなところにこそ、人の本音があるような気がして。

■女性目線の“あるある”は、どのように紡がれている?

藤田:ところで、『大人のズル休み』ですが、いつも「え、これ本当に男性が描いているの?」とびっくりさせられているんです。男性である森さんが、なぜこれほど女性読者を共感させられるのか、不思議に思っている読者も多いのではないでしょうか。

森:僕としては、共感させることにはまったくこだわっていないんです。この作品の場合はとくに、ストーリーのある作品なので、一連の流れの中にいくつか「わかるわかる」というポイントがあれば、それでいいと思っています。

藤田:しかし、これほどリアルに女性の生活や心情を描き出せるのは、なにか秘訣があるのでは? たとえば女性のきょうだいに囲まれて育ったとか。

森:一応、姉がいますけど、それが作品に生かされているかというと、そうではないでしょう。それよりも、男女の間で異なる部分をいかに想像で埋められるかが大切だと思っています。

藤田:それは具体的にはどういうことでしょう?

森:たとえば物語の中で、滝口さんがラブホテルで目覚めた際、「化粧落としとけば良かったかな……」とつぶやくシーンがあります。僕はもちろんこう思った経験はありませんが、「あ、歯を磨き忘れたな」とか「顔を洗わずに寝てしまったな」といった体験は普通にしています。これを女性に置き換えて想像してみると、化粧になるわけです。

藤田:なるほど。男女差より個人差に注目されているというお話(※前編参照)に通ずるものがありますね。

森:漫画って、そういう知らない部分を想像で埋めていく作業だと思うんですよ。『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生だって、海賊じゃないけどああいう物語を描いているわけですから(笑)。

■彼女と実家で同棲中! 知られざる森もり子のプライベート

藤田:ところで森さんは現在、彼女はいらっしゃるんですか? 作風的に、そういう人の存在が創作にあたえる影響も大きいのではないかと思うのですが。

森:いますよ。おまけに僕は今、彼女の実家に住んでいるんです。

藤田:え! それはどういう状況ですか? すでに結納を終えて結婚を待つばかりとか……。

森:いえ、それはまだなんですけどね。話せば長くなりますが、頻繁に遊びに行くうちに、向こうの家族も「泊まっていきなさいよ」と受け入れてくれるようになって、居心地がいいのでだんだん帰らなくなってしまったんです(笑)。そのうち家賃がもったいなくなって、自分の部屋は引き払っちゃいました。

藤田:それはあまり聞かないパターンですね(笑)。同棲ではなく、ご両親含めて同居しているという。

森:あ、彼女のお兄さんもいます。もっと言うと、彼女はシングルマザーなので、子どもも一緒です。

藤田:なんと。すでに大家族じゃないですか。

森:そうなんです。それまではずっと独り暮らしでしたから、にぎやかでいいですよ。たまに彼女や家族との会話からキーワードを拾って、作品に生かせないかとあれこれ考えることもあります。

藤田:『大人のズル休み』の作者がどのような恋愛をしているのかは、読者の皆さんにとって大いに興味をそそられるテーマだと思いますから、これはちょっとしたスクープですよね(笑)。

森:そうですか?(笑) まあ、楽しくやっていますよ。

■漫画家・森もり子のこれからの目標は?

藤田:さて、気になるのは森さんご自身と物語の今後です。

森:『大人のズル休み』がこれからどうなっていくのかは、正直まだ僕にもわからないです。大人になりきれない女性を題材に、そのつど考えられる展開を綴っていければというくらいで、何も決めていないのが本音です。でも、それでいいのではないかと思っています。

藤田:では、森さんご自身は、漫画家としてこれからの目標はありますか?

森:もともとLINEスタンプからスタートしているため、今もこうして女性の恋愛をテーマに描くことが多いですが、この先はもっといろんなものを描いていきたいです。また、実は絵を描くことよりも物語を考えるほうが好きなので、漫画の原作などもやれればいいですね。

藤田:SNSでの活動についてはいかがですか?

森:Twitterにしても、書籍と違ってすぐに反応が返ってくるのはやはり楽しいです。お陰様で他の仕事が忙しく、以前に比べれば最近サボり気味ですけど、原点に戻ってもう少し頑張れればと思っています。

藤田:ALICYとしても、SNSでも紙でも、そしてWebメディアでも、今後ますますのご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

(了)

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(友清哲+編集/藤田佳奈美)